概要

アクアリウムではコケと呼ばれる藻類が出現します。中でも茶ゴケと呼ばれる珪藻は多くの飼育容器で確認されています。

ジェックスラボラトリーは、琵琶湖博物館 大塚 泰介総括学芸員と共同で、室内メダカ飼育容器に出現する珪藻種を明らかにする調査を行いました。

その結果、室内メダカ飼育容器ひとつあたり、0~11属 0~17種の珪藻が出現していることが分かりました。また、調査を行った50本の容器から、25属 62種の珪藻が確認されました。

確認された珪藻は、中性や好アルカリ性の種が見られ、好酸性の種も一部から確認されました。最も多く確認されたのはCocconeis lineata(和名:コメツブケイソウ)で、採取した飼育容器の42%に出現していました。加えて、最も種数が多かった属はGomphonema(和名:クサビケイソウ)で、11種でした。

メダカを始めとした観賞魚を飼育するアクアリウムにおいて、飼育容器中に出現する珪藻が飼育者の負担になっています。珪藻によって景観を損ね、掃除の手間がかかるためです。

本研究の情報を元に、アクアリウムにおける有効な珪藻の防除商品の開発が期待されます。

本研究は、2021年12月に発行された日本珪藻学会誌『DIATOM』2021年37巻 p.30-37に論文(短報)として掲載されており、オンラインでも公開されています。

図1.珪藻が出現した室内飼育容器

 

背景

アクアリウムにおいて、コケと呼ばれる付着藻類が多くの飼育者にとって負担になっています。飼育容器の壁面などに付着することで景観を損ね、それを除去する手間がかかるためです。現在、アクアリウム用に藻類を防除する商品が販売されていますが、利用者によって効果の感じ方にばらつきが見られます。より効果的な防除方法が求められていますが、藻類は種によって生理活性が異なり、アクアリウムにどのような藻類が出現するのか、網羅的に調べた研究は無いに等しい状態でした。そこで、アクアリウムにおける有効な防藻方法を検討する最初の研究として、同環境に出現する藻類を明らかにすることを目的として調査を行いました。

アクアリウムの飼育環境は多様です。そこで今回、近年人気が高まっているメダカを飼育する環境を調査対象としました。事前にいくつかの屋内メダカ飼育容器を観察すると、容器壁面に褐色の付着物が見られました。実際にそれらを採取し、顕微鏡観察を行ったところ、珪藻であることが分かりました。アクアリウムで珪藻は茶ゴケと呼ばれて広く認知されており、同環境では珪藻の出現が多いことが予測されます。このことから、本調査は、珪藻を対象として行うこととしました。

研究手法と成果

一般家庭及び観賞魚販売店の屋内メダカ飼育容器50本から、メラミンスポンジを用いてサンプルを採取しました。サンプルは有機物を除去する処理を行い、珪藻被殻のみのプレパラートを作製し、光学顕微鏡を用いて観察・同定を行いました。

50本の屋内メダカ飼育容器から25属、62種の珪藻が確認されました。また、1飼育容器あたりに確認され種組成は、最も多い容器で11属17種、最も少ない容器で0属0種となり、1容器あたりの種数の平均は4.7でした。

今回の調査において、最も出現頻度が高い珪藻はCocconeis lineata(図2)で、採取を行った容器の42%で確認されました。最も種数が多く確認された属はGomphonema(図3)で、11種が確認されました。また、確認された珪藻はいずれも付着性でした。

図2.Cocconeis lineata

図2. Cocconeis lineata 和名はコメツブケイソウ。好清水性でアルカリ性の水域に出現します。付着力が強く、河川などでは植物の表面などに付着しています。(Scale bars:10μm)

図3.Gomphonema

図3. Gomphonema属 和名はクサビケイソウ属。樹上の群体を作り、立体的な生活様式を取っている種がある。(Scale bars:10μm)

室内メダカ飼育容器で確認された珪藻は、中性から好アルカリ性の種が確認され、一部の容器から好酸性種も確認されました。

今後の展開

今回の調査から、室内メダカ飼育容器に出現する珪藻は多様であることが明らかになりました。同環境における有効な防藻方法を検討するための、重要な情報を得ることができました。今後は、飼育容器の環境因子と出現した珪藻の細胞数の関係を調べ、さらに精度の高い情報の蓄積を行うように考えています。

■原論文情報

Yoshida, K. & Ohtsuka, T. 2021. Diatom flora in indoor tanks breeding Japanese medaka, /Oryzias latipes/. Diatom 37: 30-37.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/diatom/37/0/37_30/_article/-char/ja/

 

本研究をご紹介いただきました。

・中日新聞 (滋賀県版)2022年1月12日